【本日のおすすめ】 Wild Nothing / Nocturne (2012)

【本日のおすすめ】
Wild Nothing / Nocturne (2012)

多感な時期に聴いた音楽というのは色褪せない、なんて言われますが本当でしょうか。

なぜなら自分は中学~大学生のときに夢中になっていた音楽、とくにロックは、今となっては不思議なくらいピンと来なくなっているからです。

魔法にかかっていたということなのかな……なんだか少し寂しい。でも、ワイルド・ナッシングことジャック・テイタムの2ndを久しぶりに聴いてみたら。あの頃の青く蒼い……夢心地に再び包まれたのでした。

述懐すると、10年代の前半は80年代リバイバルの時期。特にUSインディーにおけるトレンドセッターなレーベルと言えば<Captured Tracks>。マック・デマルコやビーチ・フォッシルズを輩出した名レーベルで、本作はその代表的な1枚なのです。

程よい残響=リバーブ。80年代への憧憬に溢れているけどミックスは絶対的にモダン。

この音作りのキーパーソンはプロデューサーでありエンジニアのニコラス・ヴェルネスによるところが大きい。例えば、同時期のディアハンターやアニコレにもこの人が絡んでいる、と言ったらサウンドの質感が伝わるかも?10年代インディーの”あの音像”を生んでいた一人は間違いなくニコラスなのでしょう。

そんな凝った音空間を、才気煥発のジャックのメロディラインが駆け巡る。なんでこんなに素敵な旋律を紡げるの?というくらい繊細で鮮やかでナイーブな……それこそフェルトやニュー・オーダーの流れを汲むような筆致。

ストリングスの優雅なM1『Shadow』からして夢心地。M8の楽園ニューウェーヴ・ディスコも在りし日のミラーボールが回転するごときキラー。というか全曲このレベルです。ジャックは当時まだ20代くらいだった気がするんだけどな。こうも堂々たる黄金のソングライティングができたのは一体。彼自身もまた魔法にかかっていたのか。

無敵、あるいは全能感にあふれたインディーロックの金字塔。やがて訪れるR&Bやトラップが主流のモード、その前夜における(チルウェイヴ、グローファイ、ヒプナゴジックといった気分の)ドキュメントの最良サンプルの一つ。14年経ってもまだ魔法にかけられる。堅牢かつ自信に満ちたドリームポップ名盤。

(A.K.)


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