知れば知るほど面白いレゲエの世界! 入口までご案内!
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20代の3年間ほぼレゲエしか聴かないという生活を送っていた岩井と申します。
みなさんは”レゲエ”って聞いていかがでしょうか、ボブ・マーリー以外に何が思い浮かびますか?
「ボブ・マーリーは聴いたことがあるけど…」
「ボブ・マーリー以外に誰か居るの?」
「三木道山聴いたことある!」
「ショーン・ポールって人、兄が好きで聴いてた」
「ちゃんと聴いたことないけどたぶん好き」
今回のコラムはかつての私のように”レゲエを耳にしたことはあるけど”という、まだまだレゲエ沼から遠くにいらっしゃる方々をほんの少しだけでもレゲエ沼の近くまでお連れすることが目的のひとつ。落とす気はございませんが。
なお当コラムはかなりのボリュームですので上の目次リンクから気になるトピックへ飛んでいただく、もしくは覚悟を決めて上から順番にお楽しみいただければ幸いです。
そもそもレゲエってどういう音楽なんだっけ?
レゲエの誕生日についてはその他のジャンルの例に漏れず諸説ありますが、カリブ海の島国ジャマイカで60年代後半に誕生した音楽。ロックやソウルミュージックと年齢が近い、世界の音楽の中ではまだまだ若いほう。
元々ジャマイカには民族音楽をルーツに持つメントやラスタファリアン(ジャマイカで興った宗教の信徒)の音楽ナイヤビンギ、トリニダード・トバゴのカリプソなどなど多様な音楽があり、人々はその音を楽しんでいました。
一方では50年代にアメリカのジャズ、R&Bが流行しレコードやラジオ、ジャマイカ国内のミュージシャンによるカバーやオリジナル曲も演奏されていて、しだいに前述のルーツ音楽と混ざった結果ジャマイカ独自のポピュラーミュージックであるスカが誕生。
その後スカはアメリカのソウルミュージックに大きな影響を受けて変化したロックステディを経てレゲエ誕生!という流れ。
ではレゲエが誕生するきっかけとなったスカはどのようにして生まれたのでしょうか。
スカ以前
スカ以前にジャマイカの人々が好んだアメリカのジャズやR&B、それはとにかくリズムが刺激的で踊れる、踊りまくれる曲。
ジャマイカでヒットした曲の中にはホーンやギター、鍵盤といった楽器に2拍/4拍目(裏拍)のアクセントを強調させるという「もう少しででスカじゃん…」な曲もたくさんあります。
例えばロスコ―・ゴードンという人の「No More Doggin’」やワイノニー・ハリスの「Blood Shot Eyes」といった曲は初期のスカにとてもよく似た大きくスウィングするダンスチューン。
そしてジャマイカの人々がこの手の音楽を楽しんだ場所は”サウンドシステム”。
サウンドシステムというのはアンプにスピーカー、ターンテーブルを街角や広場などに設置して、皆でレコードを大音量で聴きながら踊る、言ってみれば移動式屋外ディスコ。
そこには選曲役や司会役もいて、お酒や食事もあって、ジャマイカで一番人気の娯楽。
初期のサウンドシステムを運営していたのは商店街で酒屋や金物屋などを営む人たち。
他所のサウンドシステムよりも人を集め、お酒や食べ物を売り儲けるために彼らは競うようにアメリカから新しいレコードを手に入れ、サウンドシステムでプレイしました。
しかし50年代半ばにロックンロールが誕生するとこの手のR&Bは衰退し、”皆が聴いたことないヤバいR&B”が手に入らなくなってしまったため、サウンドシステム経営者たちはジャマイカ国内で音楽を自給自足できないか模索するように。
そして各々録音機材を揃えミュージシャンを集めレコード制作に乗り出しました。
いよいよジャマイカに音楽レーベルやプロデューサーが活躍する時代が到来、ワクワクする!
ジャマイカ独自の音楽、スカ登場
最初期のスカとしてよく挙げられるのが59年リリースのセオフィラス・ベックフォード「Easy Snapping」という曲です。アメリカ産R&Bと同様に裏拍のアクセントが効いていますがまだ模倣の域にあります。
ほかにもこのような曲が製作される一方でスカを象徴するグループ、スカタライツが登場。
そして彼らの音楽が”スカ”というジャンルを決定的なものにしました。
ギターやピアノ、管楽器によって極端に強調された2拍4拍裏拍、3拍目に入るバスドラム。
踊らずにはいられない異形のジャズ~異形のR&B = スカが誕生しました。
当時のスカタライツの音を聴くならまずこのコンピレーションがオススメ。
ジャマイカは1962年にイギリスから独立をしており、この独立による高揚ムードと”ジャマイカ人によるジャマイカ人のための音楽の誕生”という出来事はめちゃくちゃ相性がよかったんじゃないかと思います。
そしてスカタライツをバックに様々なシンガーの曲が録音され、スカタライツのようなグループが各レコードレーベルで組まれ様々な曲が録音されました。
ちなみにボブ・マーリーもこの頃にはバニー・ウェイラー、ピーター・トッシュとの3人組、ウェイラーズとして「Simmer Down」や「One Love」といったビッグチューンをヒットさせています。
超有名曲の「One Love」、最初はスカだったんですね!
初期のウェイラーズはこんな感じ。
このアッパーな音楽、スカはしばらく流行し続けることになったのですが、当然いつまでも続くものではありません。
そして「独立したら全てが良くなる!」という国民の期待とは裏腹に、激化する2大政党「人民国家党(PNP)」と「ジャマイカ労働党 (JLP)」の対立やそれに伴う治安の悪化により、浮かれた独立記念ムードも少しずつ少しずつ後退していきます。
次第にそんな日々のサウンドトラックにピッタリな、スカよりもクールダウンした音楽が増えていきました。
ロックステディへの変化
67年頃から69年の約3年間ほど流行したのがロックステディ。
ざっくり言うとスカのテンポが遅くなったもの。
3~4人のコーラスグループによる甘めのメロディーを持つ曲が多く、スカと比べると音と音の間に隙間があるのでちょっと手の込んだアレンジをしている点も特徴で、ドラムとベースが空いた隙間でたくさん動けるようになり、スカではグルーヴの牽引役だったホーンセクションの音が控えめになっています。
ラブソングも多く後にイギリスで花開くラヴァーズ・ロックの原点とも言える音楽です。
最初期のロックステディと言われている曲として、66年リリースのホープトン・ルイス「Take It Easy」がありますがこの曲に関わったギタリスト、リン・テイトとキーボードプレイヤーのグラディ・アンダーソンという人がインタビューで「この曲はスカのセッションをしていたときに”なあグラディ、ちょっと遅くしようや”ってところから生まれたんだ」というような話をしていました。
そしてこの曲のヒットを目の当たりにしたサウンドシステム経営者たちは遅い曲の録音をしまくるわけです。
この年のジャマイカは猛暑でみんな踊るのに疲れたからダウンテンポな曲が流行った、という冗談みたいな話もありますが、どこかのサウンドシステムがある晩に遅い曲をかけたら大ウケ → 遅い曲が流行る!はやく俺達もこういうやつ作ろう!→ 遅い曲ブーム到来..というビジネスライクな流れだったんじゃないかと思っています。
他に重要だったのはアメリカで流行していたソウルミュージック。スカに影響を与えたR&Bと比べると、より洗練されたこの新しい音楽からの影響もかなり受けています。
影響どころかカバーも多く制作されてますがどれも最高。
特にカーティス・メイフィールドがいたインプレッションズはジャマイカでも人気で、彼等の「Minstrel And Queen」をテクニークスがタイトルを変えカバーした「Queen Majesty」や、ユニークス「Never Let Me Go」、「Gypsy Women」なんかがいい例。
マーヴィン・ゲイのあの曲やテンプテーションズのこの曲のロックステディカバー、ぜひぜひ探してみて下さい!
他にも紹介したいとこですがサブスクのプレイリストを頼っちゃいます。
そしてレゲエが始まった
68年~69年頃になるとロックステディはさらにテンポを落とし、よりヘヴィなドラム&ベースを聴かせる曲が現れ始めます。
例えば68年リリース、リー・ペリーの「People Funny Boy」やトゥーツ&ザ・メイタルズの「Do The Reggay」といった曲がこれに当たります。
ロックステディ~レゲエへ変化する過程の面白いところが「ロックステディよりテンポが速くなったという解釈もできる」こと。
一概には言えませんがロックステディのBPMがだいたい110~130だったとして、レゲエはBPM70~90。これを倍にしたBPM140~180と捉えても踊れるなんとも絶妙なリズムなのです。
実際に当時を知るミュージシャンの中には”レゲエはロックステディを速くした”という事を言う人も居ますし、コンサートの映像を見ると速いテンポで踊りながら演奏してたります。
リリックのテーマもシリアスな物事を扱うパターンが増え、「People Funny Boy」ではリー・ペリーが当時の雇用主を非難する内容で「成功し富を得た者たちが、そうでない人たちの事を気にも留めないようになり、いつしか搾取する側へと変貌してしまう」ことを歌っています。
冒頭から「Why,Why People Funny Boy(何がそんなに面白れえんだよ?)」と威勢が良く、レベルミュージックとしてのレゲエの萌芽と見ることもできるでしょう。怒りの相手が政府や社会ではなく元雇い主というところがリアルで良い。
ロックステディからレゲエへ変化する途上の代表曲!
トゥーツ&ザ・メイタルズ「Do The Reggay」においては綴りは違えど「レゲエ」という言葉が使われており、68年にレゲエが誕生したという意見が多いのも納得です。
またこの2曲にはリズム面でも大事な点があります。
70年代に流行したルーツレゲエには特徴的なリズムパターンがいくつかあり、それぞれ名前もついてたりするのですが、最初にレゲエを象徴するリズムとなったのが「ワンドロップ」というパターンです。
それは4拍あるうちの3拍目だけにバスドラムを鳴らすというかなり個性的なスタイル。
3拍目にはバスドラムと同時にスネアやリムショットを入れ、より強調することが多いです。
※バスドラムを1・3拍目に入れ、スネアを2・4拍目に入れるとなじみのある、ロックやポップスで登場するビートになります。
上に挙げた2曲、輪郭はまだぼやけているもののかなりワンドロップ度が高くレゲエの時代がすぐそこに来ている感じがヒシヒシと伝わってきます。
そして時代が進み73年、ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズの名を世界中に知らしめた「Catch a Fire」、「Burnin’」がリリースされる頃には右も左もワンドロップ(もしくはワンドロップの発展形)。
ここまでくると音楽はもう完全にロックステディと明確に区別ができる別の何かに変わっていました。
1973年。ここまでくると完全にレゲエ。
70年代、ジャマイカ国内で起きた二大政党間の争いは内戦と言ってもいい様な酷い状況だったそうです。
そんな時代を潜り抜けるために人々をサポートし続けた音楽。
抑制のきいた隙間の多い演奏は歌い手のメッセージを正確に伝える…それと同時に最高のダンスミュージックでもある ー レゲエの誕生です。
それから
70年代に世界的に人気のジャンルとなったレゲエはその後も進化、変化を続け80年代にはサブジャンルにしてはあまりに巨大なダンスホールレゲエ、イギリスではレゲエバンドの活躍やラヴァーズロックやニュールーツといった音楽を生み、パンク/ニューウェーブとも邂逅。
HIPHOPやクラブミュージックへも影響を与え今現在もその流れは途切れることがありません。
またレゲエは様々な土地にも根を張りその数を増やしています。
ここ日本でも70年代から様々なアプローチでレゲエに取り組み、オーセンティックなスカやレゲエを聴かせるグループや最新型のASOUND、井の頭レンジャーズやOnegramのようなカバー曲中心のグループもいい仕事してます。
度々起きるレゲエブームを一過性で終わらせずに今やしっかりと根を張った感のあるジャパレゲシーンも頼もしいしカッコいい。
名古屋だったらルード・プレッシャーズにスカイラーキング、地元のサウンドシステムやプロデューサーもファンを楽しませ続けています。
ダンスホールレゲエシーンは相変わらず元気だし、かつてのルーツレゲエを思い起こさせるレゲエ・リヴァイヴァル系のアーティストもかなり良い。
ジャマイカやイギリスだけでなく今や欧州全域はもちろん、ほど近い台湾、韓国、中国にタイやフィリピンなどの東南アジアでもたくさんのレゲエが制作されて日本のミュージシャンとの交流も盛んにおこなわれています。
いろんなスタイルに枝分かれしてもレゲエというベースがあるのでミュージシャン同士の交流も活発なのが素敵です。ダンスホールとルーツの境目を行き来しつつ他ジャンルと絡んだりなんてこともしょっちゅう。
これだけレゲエが溢れている今、今だからこそレゲエ好き!とまでいかなくても、レゲエもたまに聴きますよ~って人がもっともっと増えると嬉しいなと。
そこで少しでもレゲエの入り口に近づきやすくなるよう、おせっかいなコラムを書いてみることにしてみました。
前置き書いていたら長くなってしまいました。好きすぎて。
本当はもっと長かったのですがこれでもかなり削ったのでEase Mi Up。
あの名曲がレゲエに!カバー曲から入る
レゲエにあまり馴染みが無い人向けってことで書かせてもらっていますが、名曲や名盤は今どきネットや素晴らしいディスクガイドもありますからそういったことはそっちにまかせることにします。
じゃあ何がいいかな..と考えたときにやっぱりレゲエカバー曲なんか入りやすいんじゃないかということで、そんなカバー曲のなかでもオススメかつサブスクリプションサービス等で気軽に聴けるものピックアップしてみました。
ロック名曲カバー
私はロックから音楽の道に入りましたが当時はこんな洒落たカバーなんて無かったな…。
こんな曲たちと出会えていたらレゲエ沼へ落ちるのも早まったんじゃないか、と思えるようなものをピックアップ。
最近ほんと良いカバーが多いです。
Little Roy / Come As You Are (2011)
ヴェテランシンガーのリトル・ロイによるニルヴァーナのカバーアルバム「Battle For Seattle」に収録。
このアルバム、勢いあまってカート・コバーンが愛したヴァセリンズの「Son Of A Gun」までやっているというNuff Respect具合が最高。
プロデュースは覚えておいて損無いUKのプリンス・ファッティー。
「Come As You Are」はかなり分かりやすくワンドロップで、もともとレゲエだったんじゃない?ってくらいのハマりっぷり。この手のロックカバー企画にたまにあるレゲエ風音楽ではなくて、がっつりレゲエなので入り口としては良いはず。
プリンス・ファッティーはほんと良い仕事するのでこの曲が気に入ったらまず彼の音楽をチェック。
この曲の緩めなトロンボーンソロにぐっと来たらリコ・ロドリゲスというトロンボーン奏者もオススメ。
Earl 16 / Universal Love (2016)
こちらも大ヴェテラン、アール16の「Natty Farming」に収録。
タイトルが違う上にマイナー調にアレンジされてるので分かりにくいが、ブラーの「Tender」カバー。
原曲のもつ穏やかな雰囲気とは打って変わってこのアレンジだとかなりシリアスなルーツレゲエに大変身。
この曲を取り上げるってもうほんと…最高。
これが気に入ったら「あれ?わたしもしかしてルーツレゲエ分かっちゃった?」って思ってOK。
音は最近のアルバムだけあってモダナイズされているのでこの音が気に入ったら「レゲエ・リヴァイヴァル・ムーヴメント」で調べてみると色々見つかるかも。
Sticko / Wonderwall (2022)
日本!ジャパニーズレゲエ界の凄い人STICKOによるオアシスのカバー。制作にはレゲエセレクターのICHI-LOW、BIM ONE PRODUCTION、レゲエシンガーasuka andoのバンド、dub u setのARI等が。
気になった曲の関係者から辿っていくのも次の扉へ向かう近道!
The Dynamics / Seven Nation Army (2007)
フランスのレゲエバンド、ザ・ダイナミックスによるホワイトストライプスのカバー。原曲の良さがしっかりと残るアレンジがナイス。レゲエはちょっと薄めて使っても良いグルーヴが出る。
ザ・ダイナミックスやその周辺には秀逸なレゲエカバーがたくさん。
ダイナミックス以外のカバーが得意なミュージシャンにはMato、Lord Echo、Taggy Matcher、Grandmagnetoなど。
ビートルズ人気はどの国でも変わらなかった…ビートルズカバー
ビートルズは凄い、ほんとうに凄い。ストーンズやキンクス、ザ・フーをはじめ60年代後半といえばブリティッシュ・インヴェイジョン。その大波は旧イギリス領ジャマイカをも覆い尽くす….ことはありませんでした。
みんなそのころはスカやロックステディに夢中だったから。
でもビートルズだけは違った…。
とにかくカバーが大量。さすがビートルズ、凄い。
ビートルズカバーはほぼリアルタイムなものから現在に至るまで数多くありますがその中から4曲だけピックアップ。
Marcia Griffiths / Don’t Let Me Down (1969)
ボブ・マーリーのバックコーラスグループ、アイ・スリーズの一員としても活躍したマーシャ・グリフィスのロックステディカバー。原曲とはかなりノリの違うダンスナンバーに仕上がっています。ぶっといベースに痺れっぱなし。この曲が気に入ったらThe Gaylettes/Son Of A Preacher Manとかもハマるはず。
レゲエよりもロックステディがお好きなのかも。
Soul Vendors / Darker Shade Of Black(1968)
こんなタイトルはビートルズの曲には無い、しかし「ノルウェイの森」のインストカバー。
…カバーというかメロディーを拝借しただけとも言えるので微妙なところですがカバーという事にさせてください。
スカタライツにも在籍した天才キーボーディスト、ジャッキー・ミットゥ率いるSoul Vendorsはスタジオ・ワンというレーベルお抱えのバンド。その後何人ものシンガーがこの曲、またはこの曲を時代に合わせアップデートしたリディムの上で歌うことになるモンスターチューン。
怪しく煙るこのオルガン、危険すぎる。
Louisa Mark / All My Loving(1975)
イギリス、ロンドンです。洗練されたアレンジがロンドンらしいカリブ系移民2世のルイーザ・マークによるカバー。レゲエの重要なサブジャンル、ラヴァーズ・ロックは彼女の声無しには生まれなかったかも。
この曲が気に入ったらもうラヴァーズ・ロックが好きということで間違いなし。
RELAXIN’ WITH LOVERSシリーズをはじめ優秀なコンピがあるのでぜひ。
次に進む道が見えるって意味でおすすめしたいコンピはデニス・ボーヴェルというプロデューサーが関わったラヴァーズを集めた「The British Pure Lovers」、「The British Core Lovers」。
そしてラヴァーズ・ロック職人はデニスの世を忍ぶ仮の姿なので、彼の名前をキーに色々と探してみるときっと楽しい。
Ruddy Thomas / Ticket To Ride(1981)
ぱっと見ソウルシンガーのような出で立ちのルディ。レゲエにしてはちょっと変わった4ビート風のリズムと時代を感じるピュンピュン電子音がクセになる名カバー。
この曲が収録されている「First Time Around」にはジャクソン5の「Shake Your Body Down To The Ground」も。
プロデュースはジョー・ギブス、この人も覚えておいて損は無し。
ジョー・ギブスの仕事を集めたコンピレーション、「Joe Gibbs 12″ Reggae Discomix Showcase」シリーズはレゲエの12inch Discomixという同一リディム使いのシンガーが歌った曲とディージェイが歌った曲 or ダブバージョンをくっつけて長くしたというもの。
レゲエの兄弟?従弟?ソウルカバー曲
スカやロックステディがブラックミュージックに影響を受けその後にレゲエが誕生したわけなので、
ソウルはレゲエの血縁関係。米を肴に日本酒を飲むみたいなモノです。合うにきまっているんです。
Elizabeth Archer & The Equators / Feel Like Making Love(1977)
またまたイギリス産。時代的にもリリックの内容的にもこれはもうラヴァーズ・ロック。数多のアーティストがカバーする名曲をアッパーレゲエチューンに仕立て上げたこの人たちの事がめちゃくちゃ気になるものの情報無し。不安定なヴォーカルが可愛すぎる。
Jimmy Lindsay / Ain’t No Sunshine(1979)
レア・グルーヴ好き御用達のグループ、サイマンデでヴォーカルを務めるジミー・リンゼイのビル・ウィザーズカバー。メロウに始まったと思ったら容赦なく悲しみの底へ叩き込むヘヴィーレゲエチューンへ突入する、その瞬間空気が変わる感じがたまらない。フィッシュマンズが歌っている「カモンロッカーズ!」ってこういう感じか…と勝手に思ってます。
悲しいメッセージをより悲しく響かせるヘヴィーなレゲエとの相性が抜群。
この曲もレゲエカバーが多くかなり迷った…ぜひぜひほかのカバーも探してみてください。
Move On Up / Devon Russell(198?)
カーティス・メイフィールドのカバー。これがまたアレンジが上手で原曲越えもあるんじゃないかってくらい素晴らしいカバー。カーティスの音楽をリスペクトするレゲエミュージシャンはほんとに多く、このデヴォン・ラッセルにいたってはアルバム丸ごとカーティスカバーなんて作品も制作するほど。
この感じが気に入ったらまたまた良質コンピレーションを紹介。硬派なソウルチューンのレゲエカバーが詰まった「Darker Than Blue: Soul From Jamdown 1973-1980」をチェック。
Junior Murvin / Rasta Get Ready
インプレッションズ、つまりカーティス・メイフィールド。「People Get Ready」のカバー。
所々リリックをラスタ風に変えて、ラスタファリアンにとって重要な思想、「アフリカ回帰」の歌にしています。洞窟の中を思わせる湿度高めな独特のエフェクトはプロデューサー、エンジニアのリー”スクラッチ”ペリー。
このサウンドが気に入ったら「リー・ペリー ブラックアーク」で調べると楽しめるかも。
ブラックアークっていうのはリー・ペリーの自宅にあったスタジオの名前。
Otis Gayle / I’ll Be Around(1972)
音楽好きのジャメイカン、フィリーソウルももちろん嗜みます。
山下達郎氏も愛してやまないスピナーズのカバー。原曲のウキウキする感じとは打って変わって穏やかなアレンジ。どうですか、この辺りまで来るとレゲエミュージシャン達の腕前、センスに畏怖の念すら感じてきませんか、良すぎて。
この甘くふくよかな音にもっと包まれたいなら同時期にこの曲と同じレーベルからリリースされたジョニー・オズボーン「Truths And Rights」というアルバムがオススメ。
収録曲のひとつ「We Need Love」はこの曲と全く同リディム使用。
New Age Steppers / Some Love(1983)
チャカ・カーンの1stソロ「Chaka」収録のディスコ・ファンクチューンのカバー。ジャマイカ、イギリスのレゲエに欠かせないミュージシャンに加えスリッツのアリまで参加するポストパンク ミーツ レゲエな奇跡のグループ、ニューエイジ・ステッパーズの3枚目に収録。
10代からロンドンのレゲエ界で活躍するプロデューサー、エンジニアのエイドリアン・シャーウッドが率いるレーベル、On-Uサウンドの看板グループ。誰がこの曲やろうと言い出したのか謎ですがちゃんとこういう音楽も聴いてるところがニクい。センスが良すぎる。
この曲の雰囲気が気に入ったらやっぱりON-Uがオススメ。その中でもかなりルーツレゲエ寄りなシンガーズ&プレイヤーズというグループは◎。参加しているシンガーも多数いるので好みの声が見つかるかも。
Jackie Mittoo / Fancy Pants(1971)
出た。タイトルが変わっているパターンです。このタイトルからまさかマーヴィン・ゲイの「What’s Going On」のカバーだとは誰も思うまい…。
ビートルズカバーの項でも登場したThe Soul Vendorsのリーダー、ジャッキー・ミットゥーのカバー。
この人が関わったリディムは何度も時代を越えて甦り現在でもバリバリ現役。出かけた先でかかっているレゲエに「おっ!」てなる回数が増えること間違いなし。
ジャッキー、聴いておいて得しかないです。
ジャズ
レゲエの元を辿るとスカ、そしてスカの元となった音楽のひとつがジャズ。
スカを作ったミュージシャンはジャズプレイヤーでもあり、その後も彼らは活躍し続けています。
そうなるとジャズのレゲエカバーはごくごく自然な流れでってことになります。
ただそこはレゲエ、自分たちの土俵で勝負。そんな様子が分かるこの曲からご紹介。
ジャズがきっかけでレゲエも好きに..お洒落過ぎる入り方してみたかった…。
Rico Rodriguez / Take Five(1979)
デイヴ・ブルーベック・カルテットの超有名曲をトロンボーン奏者リコがカバー。
5/4拍子故のこのタイトルなのに4/4に矯正されてます、その方が踊れるし。
Take Fiveのレゲエカバーはリコのこの曲以前から多く存在し、中には勝手に歌を乗っけてるものも多数。
例えばジェイコブ・ミラーというシンガーの「Standing Firm」やUブラウンの「Blow Mr Hornsman」とか。
こういう曲を探したり、たまたま出会ったりするのもレゲエの醍醐味!
The Horus All Stars / Cristo Redentor(2023)
ジャズトランぺッター、ドナルド・バードのナイスメロウチューンをカバー。
めちゃくちゃ良いグルーヴ出てるんですけどこのグループ謎が多くて詳細不明。
唯一分かったのがイギリスのレゲエレーベルお抱えのバックバンドって事だけでした。
今じゃなかなか見かけないこういうミステリアスさもレゲエワールドにはたくさん残っています。
Roland Alphonso / Song For My Father(1967)
ジャズのカバーはスカ時代から!スカタライツのサックス奏者ローランド・アルフォンソによるホレス・シルヴァーの有名曲カバー。
あの異国情緒のある怪しくも哀愁のあるメロディーがスカとの相性抜群。
スカはジャマイカ以外ではジャマイカンジャズと紹介されていた、という事を何かで読みましたがこの曲を聴くと納得。
ほかにはスカタライツによるリー・モーガンの「Sidewinder」もキラー。
番外編
ほかにも色々!なんでもありなレゲエカバー、レゲエにハマりたての頃クラブで「こんな曲もやっちゃうんですか!」ってテンションぶちあがった曲達をご紹介。そして今でも余裕でぶちあがります。
MOOMIN / Adapt(2006)
カバーアルバム。陽水の「リバーサイド ホテル」にサザンの「夏をあきらめて」、泉谷しげる「春夏秋冬」にエルヴィス・コステロ「Alison」!
Sanchez / Baby Can I Hold You(1989)
ダンスホールレゲエ界屈指の人気シンガー、サンチェスが歌うトレイシー・チャップマンのヒット曲。
原曲が1988年なのでカバーして世に出すまでのスピード感が気持ちいい。流行っているうちにカバーするのも昔からの伝統。レゲエらしい陽気さの中にもほんのり切なさが残る名カバー。
90’sダンスホールレゲエシーンを代表するレーベル、Exterminatorからのリリース。
Wayne Wonder / Eternal Flame(1990)
バングルス、89年リリースの全米No1ヒット曲を翌年にウェイン・ワンダーがカバー。
Exterminator同様に大人気なPenthouseからのデビューアルバム。声が良い!
70~80年代中盤くらいまでのラヴァーズロックが人気ですがダンスホールラヴァーズももっと聴かれるようになると嬉しい。
ウェインなら同じく80’sヒット曲カルチャー・クラブの「Karma Chameleon」もナイスカバーでおすすめ!
Junior Dell & The D-Lites / Jump Around(2023)
ハウス・オブ・ペインの「JUMP AROUND」。英国オーセンティック・スカバンドによるカバー。
正直HIP HOPのカバーって想像だにしてなかったので初めて聴いたときは大喜びでしたよ。
他にもフランスのレゲエ職人Matoがやったウータン・クラン「C.R.E.A.M」とか。
HIP HOPカバー、ヤバ~~~ってなること必至。
Skatalites / Ringo(1965)
スカオリジネイター、スカタライツによる美空ひばり「りんご追分」のカバー。
メロディーは確かにりんご追分。なぜこの歌がジャマイカに伝わったのかを推測する記事も面白い。
この曲を聴いてから美空ひばりさんの歌がかっこよく聴こえるようになりました。
まさかスカから教わるとは、ありがとうスカ、ありがとうレゲエ、ありがとうジャマイカ。
2024年は日本とジャマイカの国交樹立60周年。これからもよろしく。
どうでしょう、少しレゲエに興味を持ってもらえたでしょうか。
ほんとに何度も言いますがレゲエカバー曲はめーーーーちゃくちゃ沢山あります。
そして今現在も新たな名カバーが誕生し続けています。
地球上に1日数曲ペース誕生しているって言われても信じちゃうくらい。
みなさまが素晴らしいレゲエカバーと出会えること、そしてその先により良いレゲエライフが待っていることを願っております。